過去のご挨拶

会報誌No.6より

好時節

雲が流れ、水が流れるかのように人も絶え間なく働き、一事に執着もせずに自然の流れるままに身を任せられるならば今が人間にとっての好時節となります。

しかし、あれやこれやと考えすぎたり、悩みすぎたり、苦しんだり、無駄だと思われることに足を引っ張られ、囚われることそれも人間の好時節であります。

考え抜き、悩み抜き、苦しみ抜いた先、自分なりの答を見つけては新に歩みを進め、そして、只管に生きるということは人の輝かしい本性の一つだと思います。

この頃、春の訪れを感じられるようになってまいりました。

季節はまた一つめぐりましたね。

四季の中にある好時節にも少し触れてみます。

『無門関』一九則に趙州禅師とその師匠にあたる南泉普願の問答があります。

「如何なるかこれ道」と質問した趙州に対して師の南泉は「平常心是道」と答えました。

この問答に関し、無門慧海禅師はこのような偈を作りました。

春有百花秋有月

(春に百花有り 秋に月有り)

夏有涼風冬有雪

(夏に涼風有り 冬に雪有り)

若無閑事掛心頭

(若し閑事の心頭に掛くる無くんば)

便是人間好時節

(便ち是れ人間の好時節)

春には色とりどりの花が開き、百花が有り、夏には時鳥歌う中、心地の良い涼風が吹き、秋になればお空の月がより輝き、冬には気持ち冴える中、雪が有ります。

ごくごく当たり前と思ってしまう四季の流れの中で私たちは生かされているのです。

そして、閑事の煩悩や無駄な事やどうでも良い事に心を奪われ、自己を見失うことがなければ、春夏秋冬、いつでも人間にとっての好時節にできるのです。

自然の中で私たちは生かされ、育まれています。

その大いなる恵みの中で生かされているという事実に目を向けて、感謝をして、結果自然なるままに生きてみることも大切な事なのです。

しかし、煩悩がまったく無い人間などいません。

あらゆる閑事に心を奪われても、自分の心を取り戻す早さを身につけているならばそれでよいのです。

苦しんで苦しみ抜いた先に出てくる心の一雫が自分の人生というものを清め、深めてくれます。

心を働かせて、身も働かせて出てくるこれを心の汗といいます。

この心の汗に人としての真価や自分自身の本当の輝きが宿っているのではないでしょうか。

身も心も常に働かせ、自分の人生というものを生き抜いて、生き尽くした先、本願を成就させることができます。

今こうして精一杯生きていることこそ好時節。

おかげさまで今日も好時節であります。

全ての御縁、法人をお支えしてくださる会員の皆様、菩薩様の貴方に感謝を捧げて。

合掌。

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