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香炉の茶湯「その実践を茶書に尋ねる」

香炉を使った茶事はできるだろうか。

お香を聞くのは香道のみだと思ってたけど茶道には香炉の茶湯なるものがあると聞いた。

これらの声を茶話指月集、老人雑話、堀内宗心伝書より案内できればと思います。

書物の内容を損なわれないように古茶書、宗心稽古伝書のまま載せていきます。

茶話指月集 香炉の茶湯

(茶話指月集の内容から記します。茶話指月集とは千利休の孫にあたる千宗旦の高弟四天王が一人・藤村庸軒の女婿である久須美疎安が義父の藤村庸軒による師・千宗旦からの口述をまとめたものです)

古来より「香炉の茶湯」というものがあります。昔からその習いを知るものは稀であります。先の年、利休から細川三斎公に直伝され、その後、香道の達人である三宅亡羊に、三斎公は伝授されました。その後、亡羊が藤村庸軒に伝え「田子浦」という香炉を授けたことを伝授の証といたしました。

ある時、蒲生氏郷、細川幽斎の二人が訪ねた利休の茶会の後、氏郷が千鳥の香炉を見せてほしいと言い出しました。利休は水屋に下がり不機嫌な様子で香炉を取り出し、中の灰を取り出して客の前に転がしました。幽斎は機転を働かせ「清見潟の歌の心でしょうか?」と言われたので、利休は機嫌を直り「いかにもその風情です」と返事をしたと伝わります。

順徳院百首の中に「清見潟雲もかまわぬ浪の上に月のくまならむら千鳥哉」の歌があり、今日の茶会が趣深く終えたのに、なぜ必要のない千鳥の香炉を拝見に望んだのかという意味でこの歌をひき、月明かりには無用の群千鳥を香炉になぞらえたものであります。興の過ぎたるはよろしくない。なにか物足りないようなところに風流が溢れているという道理は古書にも見えています。

ある人は、この歌は「むら千鳥」と「千鳥の香炉」の縁があったので、その情景に合い、歌の心に適ったものだ、歌の本意はあくまでも千鳥を賞するものだと言いました。

茶話指月集 雪中の香炉

ある身に応える雪の朝、千利休は、葭屋町の自宅から蓑笠を身にまとい、薮内紹智を訪ねに行きました。露地を入り蓑笠を脱いでいると、紹智が迎えに出てきたので、利休は、体を温めるための千鳥の香炉を右の袖から取り出して渡しました。すると紹智はそれを左の手に受け取り「私も持ってきました」と言い、右手で香炉を利休に渡しました。利休は大変面白がったと伝わります。

利休は紹智が老人だから体が冷えるだろうという思いやりから香炉を持ってきて、また、紹智は利休が朝早く雪の道を歩いてきてさぞ体が冷えるだろうと心配し、やはり香炉を持ってきていました。このように二人の心が同じだと思われたとき、その瞬間はとても美しく感じられます。

老人雑話 香炉茶会の次第 

(寛文の頃に江村宗具という人物が織田信長の時よりおよそ百年もの間に自身で見聞きしたことどもを話し、それを傍らで聞いていた人が筆記したものが集まったものを「老人雑話」と命名し、後世に写本二冊が伝世しています。その中の茶話を記します)

古来より香炉の茶会(茶湯)というものがあります。亭主の炭点前が終わったあと、長盆に香炉と香箱と香筋とを乗せて持ち出します。特に、料理がまだ出せないような時には香盆を出して、勝手口の障子をぴたりと閉めます。その時正客は、香炉に炊かれている香を聞いて左の袖から懐に入れ、炷き留めてから右の袖から出し、炷きながら懐中して次の人に渡します。次の客は、香箱の香を香炉の銀盤に乗せて炷きます。香を聞いた後、香炉を左の袖から入れて炷き留め、右の袖から出すのは、正客と同じであります。末客までいたり炷き終わると、末客は残った香木を一炷を香炉に置いて正客へ戻します。正客はそれを勝手口に置いて、亭主のための聞香とします。

客が五人なら香が五片、六人ならば六片(客の人数により香片数変える)を香箱に入れておきます。香の大きさは二分(約6ミリ)四方、厚さは五厘(約1.5ミリ)ほどです。こうして時間稼ぎが叶います。

もし、料理が間もなく準備できる場合とか、客に一炷だけ聞いていただこうと思うときは、勝手口の障子を細目に開けておきます。その時は、亭主が初めから炷いて出した香だけを聞いて廻し、全員が聞き終わったら勝手口へと戻しておきます。

香炉も必ず青磁の上手でなければならないというわけではありません。瀬戸など古びたものであればかまいません。そのように心得ておくのが良いでしょう。茶席に棚があり、香炉を置いて香を炷く時は、炉中へは薫物を炷かないのが決まりです。

香炉茶会の実践 歌会をプラスして

香を一炷聞いていただこうと思い、この伝書(老人雑話 香炉茶会次第)の通りの法によるお茶会をお弟子数人招き行いましたが、面白いです。私の場合は香炉茶会の次第にプラスして歌会も兼ねて行いましたが良きでございました。その時の香銘を題に各々で歌を詠みあげました。香による嗅覚の刺激、聴覚による感じる歌雅の声音により、歌の世界観が現出しては皆の歌が重なり顕れていたのを思い出します。

堀内宗心宗匠 稽古伝書 香炉の飾り方

(指導・堀内宗心宗匠の「灰形と灰の作り方」より上記内容と連関性があるであろう原文をそのまま載せます)

客を迎えるとき、空焚きといって席中にそれとなく香を焚きしめることがある。その場合、火舎のかかる空焚き香炉を用い、書院の棚や床の間に飾る。

床の間に飾る場合、掛物をかけ、その前に香炉台や本来香炉卓である中央棚を(丸卓、高麗卓、小卓など)の上にのせて飾る。中央卓は花とともに飾ってもよい。

香炉の向きは一本足が手前にくるのが基本であるが、中央卓は一本足を手前に飾るので、変化させるために香炉を二本足を手前にすることもある。

以上で香炉茶湯のお話を終わります。

一部の伝え聞くところによると「香炉茶湯」は茶の湯の秘伝の一つともいわれているそうでございます。

香炉茶湯に触れられる今に感謝をして。御礼合掌。

香や歌の茶湯 皆々聞きて 雅かな みやびかな

佐々木宗芯

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