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薄茶点前の呼吸

点前を拝見しておりますと、呼吸が浅くなっている方が多く見受けられます。

そうなってしまう原因は、点前に集中していたり、場の持つ緊張感から「息をする」という動作を忘れているためと思われます。

しかし、呼吸が一定に調ってこそ落ち着いた点前というものができるのではないでしょうか。

呼吸法を申し上げますと、身体の中心に一本の柱があるかのようにイメージをして、呼吸を数えながら、少しずつ調えていきます。

深く息を吸い、その後、息を静かに吐いていきます。

息を吐く最後の時、そっと残りの息を手で押してあげるイメージで吐ききると、呼吸が一定に落ち着くようになります。

その結果、身体が調い、心も自然と調ってくるようになります。

人は息を吸うときに緊張し、息を吐く時にリラックス状態になるといわれています。

この息遣いの中で生まれる緊張状態と安心状態を上手く使うことで落ち着いた点前ができるようになります。

この世に生きとし生けるもの、大地も植物も川も空も吸うこと、吐くことを繰り返しているからこそ自然なるままなのであります。

その呼吸をマスターすることで、自己が調い、心が調い、無有恐怖のような境地、大自在の働きなどが出てくるようになります。

そして、雲が行き、水が流れるかのように自然と手が運ぶようになります。

利休百首の中にこのようなものがあります。

(一)「点前には強みばかりを思ふなよ強きは弱く軽く重かれ」

(二)「何にても道具扱ふたびごとに取る手は軽く置く手重かれ」

物を持つときの心得を説いたこの二首の(一)の歌は、重い物を扱うときは、軽い物を持つような気持ちを忘れないこと、軽い物を持つときは、重い物の気持ちで持つことの大切さをこの歌は説いています。

重いからと重く持てば息苦しく見えます。

軽いからと手でヒョイと持ち上げてしますと心軽く見えてしまいます。

そう見えないように、心を中道にする必要があります。

(二)の歌を例に取り上げますと、運び点前の時、水指を運びます。

持ち上げる時、力を入れて、いかにも重々しく持ち上げ、重々しく置いてしまうと位置も定まらず、終始苦しく見えてしまいます。

客の方からみても重そうに見えてしまいます。

軽い物である棗や茶碗、茶杓などを持ち上げる時、軽い物であるからとヒョイと早く持ち上げてしますと、余計に軽々しく感じてしまいます。

軽い物を扱うときは、少し重々しく持つとよいのです。

道具を置いて手を離すときは、手をすぐに引くのではなく、心を残すかのようにゆっくりと道具から手を離していきます。

これは、一つの道具を扱い、一つの動作を終えたとしても、その緊張を解かずに次の動作へと心を繋げる気続点に相通じるものなのです。

これらの動作、働きの大切さをこの二首の歌は説いています。

点前の動作の中に自分なりの一定の息遣いを取り入れてみてください。

落ち着いた自分なりの良い点前ができるようになります。

茶は点てど心をとかばいきくるし

息を一二三と忘るるべからず

佐々木宗芯

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