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略盆点前について

表千家では、十三代即中斎宗匠により第二次世界大戦が終わって間もない頃に正式に定められたといわれています。

略盆点前とは「お盆点て」ともいわれており、丸盆とお茶を点てる道具さえあれば、どんなところ(旅先、屋外、室内問わず)でもお茶を点てることができます。

そのことから、炉や風炉がなくとも、茶室でなくても、いつでも薄茶を点てられるのが、略盆点前の魅力ともいえます。

また、略盆点前は瓶掛や鉄瓶がなくても、電気ケトルや電気ポット、魔法瓶といった道具でも応用が可能です。

略盆点前について語った、即中斎宗匠の言葉を紹介します。

「日常の忙しい生活の間にも、臨時の場合でも、客においしくお茶をもてなすことができます。奥から点て出しのお茶を客前に持って出るよりも、どれほど風情がありましょう。或は内輪で家族の間で一服いただく場合でも、略点前でお茶をいただきますと、そこには秩序があり、整頓もあり、或は点前の練習にもなり、和気あいあいと心美しい風景であります。」『即中茶記』

略盆点前の客の心得としては、作法は薄茶点前の時と同じではありますが、略盆点前は正式な場合とは違うので、客もあまり堅苦しく考えず、主客ともに和気藹々と話し合いながら、楽しくお茶をいただきましょう。

しかし、即中斎宗匠の言葉にもありますように、主客ともに秩序と整頓は忘れてはなりません。

お茶の席では話題にしない方が良いとされているものが、山上宗二記に記されています。

「公事の儀、世間の雑談、ことごとく無用なり。夢庵狂歌にいう。

我が仏、隣の宝、聟舅、天下の軍、人の善悪」

現代語訳すると、「裁判のこと、世間話などはことごとくしてはいけません。連歌の宗匠である夢庵の狂歌にも、自分の宗教信仰、人の財産、家族の愚痴、政治経済、人や世間の悪口は禁じています。」

お手軽な略盆点前といえど、主客ともにこれらの話題は控えた方が無難でしょう。

では、どんな話題を略盆点前の時にしたら良いのでしょうか。

互いの心が晴れたり、気持ちが明るくなるような道筋ができるポジティブな話などが適当と思われます。

また、茶の湯に関わる話も常のようにしても良いでしょう。

しかし、主客同士でしか分かり合えないことや共通の話などはしてもよいと思われます。

兎にも角にも、略盆点前でもほどよい緊張感は忘れずに、秩序と整頓を失わず、互いが和気藹々とお茶を飲めることが肝心です。

では、ここからは略盆点前の準備するもの、略盆点前の流れについて説明します。

文章のみのため、わかりづらいところが多々とあるとは思いますが、お許しください。

近々、動画での略盆点前の撮影も予定しております。

また、表千家家元猶有斎宗匠指導により出版された『新版はじめての茶の湯』第六章の略点前を参考に記していきますが、著書と異なるところがあります。

お家元の『新版はじめての茶の湯』は稽古の基礎から割り稽古、客の作法、薄茶点前、濃茶点前、略点前、茶の湯の世界などの各章から構成されており、また、カラーの写真がたくさんあります。とてもわかりやすくなっておりますので、もっと詳しく学びたい方はお手に取ってくだされば幸いです。

点前の準備

準備する道具

・お盆(大きめの丸盆)

・服紗(ない場合は、大きめの新しいハンカチ、新しい手ぬぐいで代用してください)

・鉄瓶か銀瓶(ない場合は電気ポット、ケトル等で代用できます)

・瓶掛か火鉢

・茶碗、茶杓、茶筅、茶巾

・薄茶器(20グラム、40グラム入りの抹茶の缶で代用してもいいです)

・建水(家にあるボウルなど湯水を捨てられる器を見立てて使っても良いです)

お盆の準備

・お盆の左寄り向こうに茶巾、茶筅、茶巾を仕組んだお茶碗を置き、右寄り少し手前に薄茶器を置いてください。その上に服紗(ハンカチ等でも可)を広げてかけます。

服紗をかける場合、わさが右になるようにします。

瓶掛や電気ポット、ケトルを置く位置

・置く位置に決まりはありませんが、亭主の右側に客が座るように考えて置くのがよいとされています。客の座り方も、正式の席のように座ってもよいですし、親しい方なら、輪になって座っていただくのもよいです。

点前の流れ

一 茶道口(茶道口がない場合は、瓶掛にお盆を持って向かう手前、亭主の決めた場所で一礼してもよい)一礼し(客総礼)、お盆を運び出し、瓶掛の前にお盆を置きつけます。

二 建水を持って入り、お盆の前に座り、建水を左膝横に置きます。

三 両手で服紗の向こう側の両角をとり、右角を右手で握り込んで、右手の親指と人差し指で左手のきわをとり、左手を次の角にすべらせて、右手の親指と人差し指を離し、三角にして、向こうに二つに折り、帯や腰紐につけます。(ハンカチや手ぬぐいの場合は、それらの形あらためて、つければよい)

四 お盆を持ち上げて、右膝がしらあたりに斜めに置き、膝をお盆正面に回し、一礼します。(客総礼)

男性の場合、お盆を持ったまま、まわり、一礼します。

五 居ずまいを正し、建水を真っ直ぐ進め、服紗をさばいて、薄茶器をふき、薄茶器を瓶掛前、左寄りに置きます。

六 服紗をさばき直して、茶杓を三度にふき、お盆の右手前に、縁にかけて手なりに置きます。

七 茶筅を茶碗からとり、瓶掛前、薄茶器の右に置き合わせます。

八 右手で茶碗をお盆の中央手前に寄せます。

九 服紗を逆に二つ折り、お盆の上、茶杓のかい先の向こうを「ニ」の字にふきます。

十 服紗を左手にあずけ、茶巾をとって、お盆の上、今ふいたところに置きます。

十一 服紗を一つ開いて右手で持ち、鉄瓶の蓋のつまみの上に置いて上からしっかり持って蓋をしめ、服紗を帯や腰紐につけます。

電気ポット、ケトルの場合は蓋が閉まっている状態のためしません。

十二 茶巾の向こう側を右手の親指を手前にしてとり、膝に手で持ったままあずけ、左手で鉄瓶を持ち、鉄瓶の蓋を茶巾で押さえ、湯を茶碗につぎ、茶巾をかまえてから、鉄瓶を瓶掛けに戻します。

電気ポット、ケトルの場合、茶巾で蓋を押さえる必要がないため省略します。

十三 茶巾をお盆に戻し、茶筅通しをし、茶碗をニ、三度向こうに回して温め、湯を建水にすてます。

十四 右手で茶巾をとり、茶碗をふいて、茶碗をお盆の上に置き、茶巾を右手で元の位置に戻します。

十五 右手で茶杓をとって膝にあずけ、左手で薄茶器をとり、蓋をお盆の上、茶碗の右に置きます。

十六 茶を茶碗にはき、茶杓を茶碗の縁で軽く打って茶を払い、薄茶器の蓋をし、薄茶器を瓶掛の前に戻し、茶杓もお盆の上に戻します。

十七 右手で茶巾をとり、左手で鉄瓶をとって、湯を適量茶碗に入れ、茶筅をとってお茶を点てます。

電気ポット、ケトルの場合、茶巾をとらず湯を適量茶碗に入れてください。

十八 お茶がたてば、茶碗をとって左手に受け、向こう(反時計回り)に二度回して、いつもの位置に出します。また、親しい客なら、いつもより客に近い位置に出してもよいです。(いつもの位置がない時、客の前、自分の定めたところにおいてもよい。その場合、客が茶碗を取りやすい位置を考える)

十九 客より「頂戴します」の挨拶があれば、これを受けます。

二十 客から茶碗が戻れば、すぐ右手で茶碗の右手前をとり、左手で扱い、右手で横を待ってお盆の上、中央手前に置きます。

二十一 鉄瓶から湯をつぎ、瓶掛に戻して、茶碗をすすぎ、湯を建水に捨て、茶巾でふいて、続けてお茶を点てます。

正客から「十分に頂戴しました」と挨拶があれば受け、茶碗をお盆に置いておしまいの挨拶をします(客総礼)。客より「十分に頂戴しました」との挨拶がない場合、亭主より「もう一服いかがでしょうか」と尋ねて、客の答えによりおしまいにしたり、お茶を点てたりしてください。

二十二 茶碗に湯をつぎ、茶筅すすぎをします。

二十三 湯を建水に捨て茶巾を茶碗に入れ、茶碗をお盆の上、手前に置き、茶筅も入れ、建水を後ろにさげます。

男性の場合、茶杓をかまえてから、建水を後ろに下げます。

二十四 服紗をさばいて茶杓をふき、茶碗の上に伏せてのせます。

男性の場合、茶杓を持ったまま茶杓をふきます。

二十五 服紗を左手に持ったまま、茶碗をお盆の上、左側向こう寄りに戻し、服紗を建水の上で払います。

二十六 薄茶器をふくときのように二つに折って、お盆の上、茶杓のかい先があたっていたところを「ニ」の字にふきます。

二十七 服紗を左手に持たせて膝にあずけ、瓶掛前の薄茶器を右手でとり、お盆の上、右側手前に戻します。服紗をといて帯や腰紐につけます。

二十八 膝を瓶掛の正面に戻し、お盆を両手で持って、膝と瓶掛の間に置きます。

男性の場合、お盆を持ったまま、膝を瓶掛の正面に戻し、お盆を膝と瓶掛の間に置きます。

二十九 建水を持って立ち、勝手口に回って水屋か台所にさがります。

三十 瓶掛前に出て、服紗をさばき、たたんで、鉄瓶の蓋の向こうをきり、服紗を帯や腰紐につけます。

電気ポット、ケトルの場合は省略します。

三十一 両手でお盆を持ち、茶道口でお盆を前に一礼し(客総礼)、終わります。

和やかに ただ和やかに 気持ちよく

佐々木宗芯

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