本日は文化庁伝統文化親子教室「茶の湯と香の親子教室」の稽古がありました。
子供たちにとって、自分でお菓子器を扱い、お茶碗に入ったお茶をいただく、はじめての稽古です。
はじめてのことで、より緊張してしまったのか、お口にチャックした状態が続いていました。
お菓子をいただく時、お母さんの顔をちらり、お茶をいただく時もお母さんの方にまた、チラッという繰り返しです。
その姿には微笑ましいものがありました。
しかし、最後に礼をするとき、声は小さいながら「ありがとうございました」と子供たちのほうから聞こえてきました。
その精一杯の礼がお茶の心を持っている表れではないでしょうか。
何とも有難い瞬間でありました。
ありがとうございます。とここでまた子供たちにお伝えできればと思います。
さて、本日行った、お菓子(干菓子)とお茶の点て出し(薄茶)のいただき方は教科書に記載されていますが、ここでも簡単に記しときます。
干菓子のいただき方
① 正客は干菓子器を次客との間のへり(自分の前にある線)外に置き、「お先に頂戴します」と次客に次礼(お先にという意味)をします。次客もそれを受けて一礼します。
② 干菓子気器をへり外正面に戻し、亭主に「お菓子を頂戴します」とお菓子をいただく挨拶をして、懐紙を膝前に出し、お菓子器に手を添えながら、お菓子をつまんでとります。(二種類の時には、向こう(奥から)、手前(自分に近いところ)の順に一つずつとる)
③ 干菓子器を両手で持ち、次客との間のへり外に置きます。
④ 右手で懐紙ごと持ち上げて、左手で懐紙を下に受け、右手の指で干菓子をつまんでいただきます。聞き手が左手の場合は逆でもよろしいです。(煎餅などの大きなものは、割っていただいてもよい)
⑤ 二種のうち、一種だけいただいて、残りは懐紙に包んで持ち帰っても大丈夫です。
⑥ 三客も同様の作法と手順でお菓子を取ります。(末客はお菓子器をへり外の左側においときます。)
薄茶のいただき方(点て出し)
① 自分の前にお茶碗が運ばれたら、へり外にある茶碗を右手でとり、左手で仮持ちして受け、右手で茶碗を自分と次客とのへり内の間に置き、「お先に頂戴します」と礼をします。(下座のお客の場合は上座のお客との間にお茶碗を先に置き「お相伴いたします」と挨拶、その後、自分より下座の客に「お先に頂戴します」と礼をする)
② 茶碗をへり内の膝前に置き、亭主に「頂戴します」と挨拶をします。
③ 右手で茶碗をとり、左手のひらに受けて、おしいただきます。(茶碗を両手であげて、頭をさげる)
④ 茶碗を手にとって、茶碗の右側を手前に来るように回します。
⑤ 三口半ほどで飲み、最後は吸いきります。(無理して三口半で飲もうとはせず、自分のペースでも大丈夫です。)
⑥ 飲み終わったら、右手の指の先で、飲み口を左から右へとぬぐいます。
⑦ 右手の指先を懐紙で清める。
⑧ 茶碗の正面を元に戻し、茶碗を膝前に置き、両手をついて全体の形を見た後、手にとって拝見します。(拝見するとき、お茶碗は高くあげない)
お茶碗の拝見
① 茶碗をへり内の膝前に置き、両手をついて、まずは全体(右左の側面も)の形を拝見します。
② 次に右手で茶碗をとり、右手を添えて、回しながら(国語の本をめくるように)、外回りの釉の様子や高台(お茶碗の下)、内側の見込みなども拝見します。
③ 最後にもう一度、あらためて全体の形を手をついて拝見し、茶碗をとりにきた場合は、茶碗の正面を向けなおして、先ほど出された位置に返します。
最後に
作法の手順を示すと、どうも覚えることが多く、難しいと考えてしまうかもしれません。
しかし、まずは難しいことはゆっくり学ぶとして、稽古中、お茶会に参加するときや招かれたときは自分の心を落ち着かせ、敬虔な気持ちで点ててくれた人に感謝をして、頂戴できればよろしいと思います。
敬虔な気持ちが心を作り、稽古をしているうちに体を自然に思いやりのある形に動かしてくれるはずです。その自然な振る舞いが作法であります。
堀内宗心宗匠も「亭主が心をこめた一服のお茶を客が敬虔な気持ちで頂戴すれば、これで茶の湯のすべてであります」とご著書で申しています。
ゆっくりでもよろしいので、ご一緒に歩を進めましょうね。
御礼合掌。
釣り竿で心釣り 月も釣る
鍬では心の土壌 雲も耕す
釣月耕雲 卒啄同時
佐々木宗芯